僕たちはお客様の悩みを解決する手助けをしているけれど
僕たちの悩みは誰が助けてくれるんだろう?
「月島さん、ちょっといいですか?」
「…なるほど、その場合私達がどうすべきか…」
「やはり、仲間が相談にのって差し上げる事で、解決出来ればいいのでしょうが…」
時々、苦しくなるだけといったらそれまでだけど
僕たちは人じゃないから病院に行くって事も無い。
治すにはどうしたらいいんだろう?二人で探しても答えは見つかりそうになかった。
「両国君、ちょっといいかな?」
「今まで考えた事もなかったなあ」
「けどよ、駅の不調…つまり、病気や怪我って言ったら、もしかしたら構内のどっかが痛んでるのかもしんねえ」
なるほど、そういう不調だったら解らなくも無いかな?
構内を軽く歩いて調べてみた。勿論、エスカレーターは使わない。
…でも別にどこにも工事しなきゃいけない部分はなさそう。
綺麗に利用してもらってるのは嬉しい。
「新宿さん、少しいいですか?」
「それっていつ、どんな時に起こるんだ?」
言われて思い出してみる。
「ずっと…っていう訳じゃなくて、時々、かな。」
「ねえねえ、何の話?」
「汐留、居たのか。」
「居ちゃいけなかった?」
「ううん、実はね…」
「六本木さん、大丈夫?」
「うん、今はなんとも無いよ。」
「あ、じゃあさ!車掌さんに聞いてみるのはどうかな?あの人ならボクたちが知らない事でも解りそうじゃない?」
「…やめとけ。あいつは信用出来ないだろーが。」
「そうかなあ。あっ、じゃあ、リーダーの都庁さんはどうかな?」
─都庁さん。
「俺とあいつは同期だが、過去そんな症状は聞いた事無いな。」
「えーっ。じゃあ都庁さんに聞いてもダメかなあ?」
少し苦しい。
やっぱり僕はどこかおかしいのかな?
・
・
・
先日の報告書を漸くまとめ終わった。
今回も何とかお客様の深い部分の悩みに気付く事が出来てよかった。
…こちらにやってくるのは、とくがわだ。
隣に飛び上がってきて落ち着くのを見て、何となく呟いてみる。
「どうしてか解らないけど…やっぱり苦しいんだよね…。」
(俺に言われてもな…。)
背中を撫でようとしたら逃げられてしまった。
ちょっとショック。
とくがわが走っていく先のドアが開く。
「六本木、ここにいたのか。」
…都庁さん。
あれ。
苦しく…なった。
どうしよう。
「あ、えっと、これ…報告書です。」
「うん、これの作業をしていたのか?」
「はい、さっき出来た所です。」
提出したら少し休もう。疲れただけかもしれない。
「…六本木。」
「?…はい。」
もしかして、書類に不備でもあっただろうか?
確認はしたけど…考え事をしていてミスがあったかもしれない。
「他の皆が、お前が悩んでいると心配していてな。」
「あ…すみません。」
皆に相談してみたけど、今のところこれといった糸口があるでもない。
都庁さんにも相談してみるべきだろうか?
構内の不調じゃなかったのは解った。
都庁さんが来た時に苦しくなった。
…もしかして僕は都庁さんが嫌いなんだろうか?…いや、そんな事は無い。むしろ…
?
僕はこの違和感に漸く気付く事が出来た。
「ああそうだ、この後の予定について報告があるそうだ。戻るぞ?」
「解りました。」
背中を追って、気持ちを辿る。
薄い影を踏んで、その主を想う。
駅がこんな思いをする事は、許されるのだろうか?